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〘901㌻〙

第1章

1 アハシユエロスすなはち印度いんどよりエテオピヤまで百ひやく二十七州しうを治をさめたるアハシユエロスの世よ 2 アハシユエロス王わうシユシヤンの城󠄃しろにてその國くにの祚くらゐに坐ざしをりける當時ころ 3 その治世ぢせいの第だい三年ねんにその牧伯等つかさたちおよび臣僕しもべ等らのために酒宴しゆえんを設まうけたり ペルシヤとメデアの武士もののふおよび貴たふとき族やからと諸しよ州しうの牧伯等つかさたちその前󠄃まへにありき 4 時ときに王わうその盛󠄃さかんなる國くにの富有󠄃とみとその大おほいなる威󠄂光ゐくわうの榮さかえを示しめして衆多おほくの日ひをわたり百ひやく八十日にちに及およびぬ 5 これらの日ひのをはりし時とき王わうまた王わうの宮みやの園そのの庭󠄄にはにてシユシヤンに居をる大だい小せうのすべての民たみのために七日なぬかの間あひだ酒宴しゆえんを設まうけたり 6 白しろ緑みどり靑あをの帳幔とばりありて細布ほそぬのと紫色むらさきの紐ひもにて銀ぎんの環󠄃わおよび蝋石らふせきの柱󠄃はしらに繋つながるまた牀榻いすは金きん銀ぎんにして赤あか白しろ黃き黑くろの蝋石らふせきの上うへに居すゑらる 7 金きんの酒盃さかづきにて酒さけを賜たまふその酒盃さかづきは此これと彼かれおのおの異ことなり王わうの用もちゐる酒さけをたまふこと夥おびただし王わうの富有󠄃とみに適󠄄かなへり 8 その飮のむことは法はふにかなひて誰たれも强しふることを爲せず 其そは王わう人びととして各々おの〳〵おのれの好このむごとく爲なさしむべしとその宮內くないのすべての有󠄃司つかさに命めいじたればなり

9 后きさきワシテもまたアハシユエロス王わうに屬ぞくする王わう宮きうの內うちにて婦󠄃女をんなのために酒宴しゆえんをまうけたり 10 第七日なぬかめにアハシユエロス王わう酒さけのために心こゝろ樂たのしみ王わうの前󠄃まへに事つかふる七人にんの侍從じじうメホマン、ビスタ、ハルボナ、ビグタ、アバグタ、セタルおよびカルカスに命めいじ 11 后きさきワシテをして后きさきの冠冕󠄅かんむりをかぶりて王わうの前󠄃まへに來きたらしめよと言いへり 是こは彼かれ觀みるに美うるはしければその美麗󠄃うるはしきを民等たみどもと牧伯等つかさたちに見しめさんとてなりき 12 しかるに后きさきワシテ侍從じじうが傳つたへし王わうの命めいに從したがひて來きたることを肯うけがはざりしかば王わうおほいに憤いきどほりて震怒いかりその衷うちに燃もゆ

13 是こゝにおいて王わう時ときを知しれる智者ちしやにむかひて言いふ(王わうはすべて法律おきてと審理さばきに明あきらかなる者ものにむかひて是かくの如ごとくするを常つねとせり
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14 時ときに彼かれの次󠄄つぎにをりし者ものはペルシヤおよびメデアの七人にんの牧伯きみカルシナ、セタル、アデマタ、タルシシ、メレス、マルセナ、メムカンなりき 是これみな王わうの面かほを見みる者ものにして國くにの第一だいいちに位くらゐせり) 15 后きさきワシテ、アハシユエロス王わうが侍從じじうをもて傳つたへし命めいを爲なさざれば法律おきてにしたがひて如何いかに彼かれになすべきや 16 メムカン王わうと牧伯つかさたちの前󠄃まへに答こたへて曰いふ 后きさきワシテは唯たゞ王わうにむかひて惡あしき事ことをなしたる而已のみならず一切すべての牧伯つかさたちおよびアハシユエロス王わうの各かく州しうのもろもろの民たみにむかひてもまた之これを爲なせるなり〘696㌻〙 17 后きさきのこの事ことあまねく一切すべての婦󠄃女をんなに聞きこえて彼かれらつひにその夫をつとを藐いやしめ觀みて言いはん アハシユエロス王わう后きさきワシテに己おのれのまへに來きたれと命めいじたりしに來きたらざりしと 18 而しかして后きさきの此この所󠄃行しわざを聞きけるペルシヤとメデアの諸しよ夫人ふじんもまた今日こんにち王わうのすべての牧伯等つかさたちに是かくのごとく言いはん然さすれば必かならず藐視いやしめと忿怒いかり多おほく起󠄃おこるべし 19 王わうもし之これを善よしとしたまはばワシテは此この後のちふたゝびアハシユエロス王わうの前󠄃まへに來きたるべからずといふ王わう命めいを下くだし之これをペルシヤとメデアの律法おきての中うちに書かきいれて更󠄃かはること無なからしめ而しかしてその后きさきの位くらゐを彼かれに勝󠄃まされる他ほかの者ものに與あたへたまへ 20 王わうの下くだしたまはん御詔みことのりこの大おほいなる御み國くにに徧あまねく聞きこえわたる時ときは妻つまたる者ものことごとくその夫をつとを大小だいせうとなく共ともに敬うやまふべしと 21 王わうと牧伯等つかさたちこの言ことばを善よしとしければ王わうメムカンの言ことばのごとく爲なしたり 22 かくて王わうの諸しよ州しうに徧あまねく書ふみをおくりもろもろの州しうにその文󠄃字もじにしたがひて書かきおくりもろもろの民たみにその言語ことばにしたがひて書かきおくり凡すべて男子をとこたる者ものはその家いへの主しゆとなるべくまたおのれの民たみの言ことばを用もちひてものいふべしと諭󠄄さとしぬ

第2章

1 これらの事ことの後のちアハシユエロス王わう忿怒いかりとけてワシテおよび彼かれが爲なしたる所󠄃ところまたその彼かれにむかひて議はかり定さだめしところの事ことを憶おもひおこせり 2 ここに王わうの前󠄃まへに事つかふる僕しもべ等らいひけるは請󠄃こふ美うるはしき少わかき處女等をとめらを王わうのために尋󠄃たづねもとめん 3 願ねがはくは王わう御み國くにの各かく州しうにおいて官吏󠄄つかさびとを擇えらび之これをして美うるはしき處女をとめをことごとくシユシヤンの城󠄃しろに集あつめしめ婦󠄃人をんなを管理つかさどる王わうの侍從じじうヘガイの手てにわたして婦󠄃人をんなの局つぼねに入いらしめ而しかして潔󠄄淨きよめの物ものをこれに與あたへたまへ
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4 斯かくして王わうの御み意こゝろに適󠄄かなふ女子をんなごを取とりワシテに代かはりて后きさきとならしめたまへと王わうこの事ことを善よしとして然しかなしぬ

5 茲こゝにシユシヤンの城󠄃しろに一人ひとりのユダヤ人びとありその名なをモルデカイと曰いひキシの曾孫ひこシメイの孫まごヤイルの子こにしてベニヤミン人びとなり 6 かれはバビロンの王わうネブカデネザルが擄とらへゆきしユダのヱコニヤとともに擄とらはれ往󠄃ゆける俘囚とりこの中なかにありてヱサレムより移うつされたる者ものなり 7 かれその叔父󠄃をぢの女むすめハダツサすなはちエステルを養󠄄やしなひ育そだてたり 是こは父󠄃ちゝも母はゝもなかりければなり この女子をんなご顏かほ貌かたち勝󠄃すぐれてうるはしかりしがその父󠄃母ちちははの死しにたる後のちモルデカイこれを取とりておのれの女むすめとなせるなり

8 王わうの命令おふせと詔言みことのりの聞きこえ傳つたはり衆多おほくの女子をんなごシユシヤンの城󠄃しろにあつめられてヘガイの手てにわたされし時ときエステルも亦また王わうの家いへに携たづさへられてゆき婦󠄃人をんなを管理つかさどるヘガイの手てに交󠄄わたされしが〘697㌻〙 9 この女子をんなごヘガイの意こゝろにかなひて之これが惠めぐみを受うけたり即すなははちヘガイすみやかに之これに潔󠄄淨きよめの物ものおよびその分󠄃ぶんを與あたへまた王わうの家いへの中うちより七人ひとの侍女こしもとを擧あげてこれに附つきそはしめ彼かれとその侍女こしもと等どもを婦󠄃人をんなの局つぼねの中うちなる最もつとも佳よき處ところに移うつしぬ 10 エステルはおのれの民たみをもおのれの宗族やからをも顯あらはさざりき其そはモルデカイこれを顯あらはすなかれと彼かれに言いひふくめたればなり 11 またモルデカイはエステルの模樣ありさまおよびその如何いかになれるかを知しらんため日々ひびに婦󠄃人をんなの局つぼねの庭󠄄にはの前󠄃まへをあゆめり

12 女子をんなごはおのおの婦󠄃人をんなの則のりにしたがひて十二ヶ月󠄃げつを經へしかる後のち順番じゆんばんにいりてアハシユエロス王わうにいたる是これその潔󠄄淨きよめの日ひを終󠄃をはるはかくのごとくなるが故ゆゑなり 即すなはち沒藥もつやくの油あぶらを用もちふること六ヶ月󠄃げつまた各種さまざまの薰物かほりものおよび婦󠄃人をんなの潔󠄄淨きよめごとにあつる物もの等などを用もちふること六ヶ月󠄃げつ 13 女子をんなごの王わうにいたるは是かくのごとしその婦󠄃人をんなの局つぼねより出いでて王わうの家いへにゆく時ときには凡すべてその望󠄇のぞむ物ものをことごとく與あたへらる
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14 而しかして夕ゆふべに往󠄃ゆき朝󠄃あしたにおよびて婦󠄃人をんなの第だい二の局つぼねに還󠄃かへり妃嬪ひめをつかさどる王わうの侍從じじうシヤシガスの手てに屬ぞくす王わうこれを喜よろこびて名なをさして召めすにあらざれば重かさねて王わうにいたることなし 15 ここにモルデカイの叔父󠄃をぢアビハイルの女むすめすなはちモルデカイが取とりておのれの女むすめとなしたるエステル入いりて王わうにいたるべき順番じゆんばんにあたりけるが彼かれは婦󠄃人をんなをつかさどる王わうの侍從じじうヘガイが言いひきかせたる事ことの外ほかには何なにをももとめざりき エステルは凡すべて彼かれを見みる者ものによろこばれたり

16 かくエステルは王わうの家いへに召めしいれられてアハシユエロス王わうにいたれり是これその治世ぢせいの第だい七年ねん十月󠄃ぐわつ即すなはちテベテの月󠄃つきなり 17 王わう一切すべての婦󠄃人をんなに超こえてエステルを愛あいしければエステルはすべての處女をとめにまさりて王わうの前󠄃まへに恩寵めぐみと厚情󠄃なさけを得えたり 王わうつひに后きさきの冕󠄅かんむりをかれの首かうべに戴いただかせ彼かれをしてワシテにかはりて后きさきとならしむ 18 ここにおいて王わうおほいなる酒宴しゆえんを設まうけてそのもろもろの牧伯つかさと臣僕しもべを饗もてなす これをエステルの酒宴しゆえんと稱󠄄となふまた諸しよ州しうに租税そぜいをゆるし王わうの富有󠄃とみにかなひて物ものを賜たまふ

19 再度ふたゝび處女むすめの集あつめられし時ときモルデカイは王わうの門もんに坐ざしをりぬ 20 エステルはモルデカイがかれに言いひふくめたる如ごとくして未いまだおのれの宗族やからをもおのれの民たみをも顯あらはさざりき エステルはモルデカイの言語ことばにしたがふことその彼かれに養󠄄やしなひ育そだてられし時ときと異ことならざりき 21 當時そのころモルデカイ王わうの門もんに坐ざし居ゐける時とき王わうの侍從じじうにて戶とを守まもる者ものの中うちビグタンおよびテレシの二人にん怨うらむる事ことありてアハシユエロス王わうを弑しいせんともとめたりしが〘698㌻〙 22 その事ことモルデカイに知しれければモルデカイこれを后きさきエステルに吿つげエステルまたモルデカイの名なをもてこれを王わうに吿つげたり 23 ここにおいて此事このことをしらべさせしにその然しかること顯あらはれければ彼かれら二人ふたりは木きにかけられその事ことは王わうの前󠄃まへなる日誌につしの書ふみにかきしるさる
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第3章

1 これらの事ことの後のちアハシユエロス王わうアガグ人びとハンメダタの子こハマンを貴たふとびこれを高たかくして己おのれとともにある一切すべての牧伯つかさの上うへにその席せきを定さだめしむ 2 王わうの門もんにある主しゆの諸しよ臣しんみな跪ひざまづきてハマンを拜はいせり 是これは王わう斯かくかれになすことを命めいじたればなり 然しかれどもモルデカイは跪ひざまづかず又󠄂またこれを拜はいせざりき 3 ここをもて王わうの門もんにある王わうの諸臣しよしんモデカイにむかひて言いふ 汝なんぢいかなれば王わうの命めいに背そむくやと 4 かれらモルデカイに日々ひびかく言いふといへども聽きかざりければその事ことの爲なしをふさるべきか否いなを見みんとてハマンにこれを吿つげたり 其そはモルデカイおのれのユダヤ人びとなることを語かたりたればなり 5 ハマン、モルデカイの跪ひざまづかずまた己おのれを拜はいせざるを見みたれば ハマン忿怒いかりにたへざりしが 6 ただモルデカイ一人ひとりを殺ころすは事こと小ちひさしと思おもへり彼かれらモルデカイの屬ぞくする民たみをハマンに顯あらはしければハマンはアハシユエロスの國くにの中うちにある一切すべてのユダヤ人びとすなはちモルデカイの屬ぞくする民たみをことごとく殺ころさんと謀はかれり

7 アハシユエロス王わうの十二年ねん正月󠄃しやうぐわつ即すなはちニサンの月󠄃つきにハマンの前󠄃まへにて十二月󠄃ぐわつすなはちアダルの月󠄃つきまで一日ひとひ一日ひとひのため一月󠄃ひとつき一月󠄃ひとつきのためにプルを投なげしむプルは即すなはち籤くじなり 8 ハマンかくてアハシユエロス王わうに言いひけるは御み國くにの各かく州しうにある諸民しよみんの中なかに散ちらされて別わかれ別わかれになりをる一ひとつの民たみありその律法おきては一切すべての民たみと異ことなり また王わうの法律おきてを守まもらずこの故ゆゑにこれを容ゆるしおくは王わうの益えきにあらず 9 王わうもしこれを善よしとしたまはば願ねがはくは彼かれらを滅ほろぼせと書かきくだしたまへ さらば我われ王わうの事ことをつかさどる者等ものどもの手てに銀ぎん一萬まんタラントを秤はかり交󠄄わたして王わうの府庫くらに入いれしめん 10 王わうすなはち指環󠄃ゆびわをその手てより取とりはづしアガグ人びとハンメダタの子こハマンすなはちユダヤ人びとの敵てきたる者ものに交󠄄わたし 11 しかしてハマンに言いひけるはその銀ぎんはなんぢに與あたふ その民たみもまた汝なんぢにあたふれば汝なんぢに善よしと見みゆるごとく爲せよ
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12 こゝにおいて正月󠄃しやうぐわつの十三日にちに王わうの書記しよき官くわんを召めしあつめ王わうに屬ぞくする州しう牧ぼく各かく州しうの方伯はうはくおよびもろもろの民たみの牧伯つかさにハマンが命めいぜんとする所󠄃ところをことごとく書かきしるさしむ 即すなはちもろもろの州しうにおくるものは其その文󠄃字もじをもちひ もろもろの民たみにおくるものはその言語ことばをもちひ おのおのアハシユエロス王わうの名なをもてこれを書かきき王わうの指環󠄃ゆびわをもてこれに印いんしたり〘699㌻〙 13 しかして驛卒はゆまづかひをもて書ふみを王わうの諸しよ州しうにおくり十二月󠄃ぐわつすなはちアダルの月󠄃つきの十三日にちにおいて一日にちの內うちに一切すべてのユダヤ人びとを若わかき者もの老おいたる者もの小兒こども婦󠄃人をんなの差別けぢめなくことごとく滅ほろぼし殺ころし絕たやしかつその所󠄃有󠄃物もちものを奪うばふべしと諭󠄄さとしぬ 14 この詔旨みことのりを諸しよ州しうに傳つたへてかの日ひのために準備そなへをなさしめんとてその書かける物ものの寫本うつしを一切すべての民たみに開ひらきて示しめせり 15 驛卒はゆまづかひ王わうの命めいによりて急󠄃いそぎて出いでゆきぬ この詔書みことのりはシユシヤンの城󠄃しろに於おいて出いだされたり かくて王わうとハマンは坐ざして酒さけ飮のみゐたりしがシユシヤンの邑まちは惑まどひわづらへり

第4章

1 モルデカイ凡すべてこの爲なされたる事ことを知しりしかばモルデカイ衣服󠄃ころもを裂さき麻󠄃布あさぬのを纒󠄂まとひ灰󠄃はひをかぶり邑まちの中なかに行ゆきて大おほいに哭なき痛いたく號さけび 2 王わうの門もんの前󠄃まへまでも斯かくして來きたれり 其そは麻󠄃布あさぬのをまとふては王わうの門もんの內うちに入いること能あたはざればなり 3 すべて王わうの命めいとその詔書みことのりと到いたれる諸しよ州しうにてはユダヤ人びとの中うちにおほいなる哀かなしみあり斷食󠄃だんじき哭泣なげき號呼さけびおこれり また麻󠄃布あさぬのをまとふて灰󠄃はひの上うへに坐ざする者ものおほかりき

4 こゝにエステルの侍女こしもとおよびその侍從じじう等らきたりてこれを吿つげければ后きさきはなはだしく憂うれひ衣服󠄃きものをおくり之これをモルデカイにきせてその麻󠄃布あさぬのを脱ぬがしめんとしたりしがうけざりき 5 こゝをもてエステルは王わうの侍從じじうの一人ひとりすなはち王わうの命めいじて己おのれに侍はべらしむるハタクといふ者ものを召めしモルデカイの許もとに往󠄃ゆきてその何事なにごとなるか何故なにゆゑなるかを知しきたれと命めいぜり 6 ハタクいでて王わうの門もんの前󠄃まへなる邑まちの廣ひろ場ばにをるモルデカイにいたりしに 7 モルデカイおのれの遇󠄃あひたるところを具󠄄つぶさにこれに語かたりかつハマンがユダヤ人びとを滅ほろぼす事ことのために王わうの府庫くらに秤はかりいれんと約やくしたる銀ぎんの額たかを吿つげ
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8 またその彼等かれらをほろぼさしむるためにシユシヤンにおいて書かきて與あたへられし詔書みことのりの寫本うつしを彼かれにわたし之これをエステルに見みせかつ解ときあかし また彼かれに王わうの許もとにゆきてその民たみのためにこれに矜恤あはれみを請󠄃こひその前󠄃まへに願ねがふことを爲すべしと言いひつたへよと言いへり

9 ハタクかへり來きたりてモルデカイの言詞ことばをエステルに吿つげければ 10 エステル、ハタクに命めいじモルデカイに言ことばをつたへしむ云いはく 11 王わうの諸しよ臣しんがよび王わうの諸しよ州しうの民たみみな知しる男をとこにもあれ女をんなにもあれ凡すべて召めされずして內うち庭󠄄にはに入いりて王わうにいたる者ものは必かならず殺ころさるべき一ひとつの法律おきてあり されど王わうこれに金圭きんけいを伸のぶれば生いくるを得うべし かくて我われ此この三十日にちは王わうにいたるべき召めしをかうむらざるなり〘700㌻〙 12 エステルの言ことばをモルデカイに吿つげけるに

13 モルデカイ命めいじてエステルに答こたへしめて曰いはく 汝なんぢ王わうの家いへにあれば一切すべてのユダヤ人びとの如ごとくならずして免まぬかるべしと心こゝろに思おもふなかれ 14 なんぢ若もしこの時ときにあたりて默もくして言いはずば他ほかの處ところよりして助援󠄃たすけと拯救すくひユダヤ人びとに興おこらんされど汝なんぢどなんぢの父󠄃ちゝの家いへは亡ほろぶべし 汝なんぢが后きさきの位くらゐを得えたるは此かくのごとき時ときのためなりしやも知しるべからず 15 エステルまたモルデカイに答こたへしめて曰いはく 16 なんぢ往󠄃ゆきシユシヤンにをるユダヤ人びとをことごとく集あつめてわがために斷食󠄃だんじきせよ 三日みつかの間あひだ夜よる晝ひるとも食󠄃くらふことも飮のむこともするなかれ 我われとわが侍女こしもと等らもおなじく斷食󠄃だんじきせん しかして我われ法律おきてにそむく事ことなれども王わうにいたらん 我われもし死しぬべくば死しぬべし 17 ここにおいてモルデカイ往󠄃ゆきてエステルが凡すべておのれに命めいじたるごとく行おこなへり

第5章

1 第三日みつかめにエステル后きさきの服󠄃ころもを着き王わうの家いへの內うち庭󠄄にはにいり王わうの家いへにむかひて立たつ王わうは王わう宮きうの玉ぎよく座ざに坐ざして王わう宮きうの戶口とぐちにむかひをりしが
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2 王わう后きさきエステルが庭󠄄にはにたちをるを見みてこれに恩めぐみをくはへ其その手てにある金圭きんけいをエステルの方かたに伸のばしければエステルすすみよりてその圭けいの頭かしらにさはれり 3 王わうかれに言いひけるは后きさきエステルなんぢ何なにをもとむるやなんぢの願意ねがひは何なになるや國くにの半󠄃分󠄃なかばにいたるとも汝なんぢにあたふべし 4 エステルいひけるは王わうもし善よしとしたまはば願ねがはくは今日こんにちわが王わうのために設まうけたる酒宴しゆえんに王わうとハマンと臨のぞみたまへ

5 ここに於おいて王わうハマンを急󠄃いそがしめてエステルの言いへるごとくならしめよと命めいじ王わうとハマンやがてエステルが設まうけたる酒宴しゆえんに臨のぞめり 6 酒宴しゆえんの時とき王わうまたエステルに言いひけるは汝なんぢの所󠄃求もとめは何なになるやかならずゆるさるべし なんぢの願意ねがひは何なになるや國くにの半󠄃分󠄃なかばにいたるとも成󠄃就なしとげらるべし 7 エステル言いひけるは我わが所󠄃求もとめわが願意ねがひは是これなり 8 われもし王わうの目めの前󠄃まへに恩めぐみを得え 王わうもしわが所󠄃求もとめをゆるしわが願意ねがひを成󠄃就なしとげしむることを善よしとしたまはば願ねがはくは王わうとハマンまたわが設まうけんとする酒宴しゆえんに臨のぞみたまへ われ明日あす王わうの宣のたまへる言ことばにしたがはん

9 かくてハマンはその日ひよろこび心こゝろたのしみて出いできたりけるがハマン、モルデカイが王わうの門もんに居をりて己おのれにむかひて起󠄃たちもあがらず身動みうごきもせざるを見みしかば 痛いたくモルデカイを怒いかれり〘701㌻〙 10 されどもハマン耐たへ忍󠄄しのびて家いへにかへりその朋友とも等らおよび妻つまゼレシをまねき來きたらしめ 11 而しかしてハマンその富とみの榮耀󠄃かがやきとその子この衆多おほきことと凡すべて王わうの己おのれを貴たふとびし事ことまた己おのれをたかくして王わうの牧伯つかさおよび臣僕しもべの上うへにあらしむることを之これに語かたれり 12 しかしてハマンまた言いひけらく后きさきエステル酒宴しゆえんを設まうけたりしが我われのほかは何人なにびとをも王わうとともに之これに臨のぞましめず明日あすもまた我われは王わうとともに后きさきに招まねかれをるなり 13 然されどユダヤ人びとモルデカイが王わうの門もんに坐ざしをるを見みる間あひだは是これらの事ことも快樂たのしからず 14 時ときにその妻つまゼレシとその一切すべての朋友ともかれに言いひけるは請󠄃こふ高たかさ五十キユビトの木きを立たてしめ明日あすの朝󠄃あさモルデカイをその上うへに懸かけんことを王わうに奏まうせ而しかして王わうとともに樂たのしみてその酒宴しゆえんにおもむけとハマンこの事ことを善よしとしてその木きを立たてしめたり
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第6章

1 その夜よる王わうねむること能あたはざりければ命めいじて日々ひびの事ことを記しるせる記錄きろくの書ふみを持もちきたらしめ王わうの前󠄃まへにこれを讀よましめけるに 2 モルデカイ曾かつて王わうの侍從じじうの二人ふたり戶とを守まもる者ものなるビグタンとテレシがアハシユエロス王わうを殺ころさんと謀はかれるを吿つげたりと記しるせるに遇󠄃あふ 3 王わうすなはち言いひけるは之これがために何なにの榮譽ほまれと爵󠄄位くらゐをモルデカイにあたへしや 王わうに事つかふる臣僕しもべ等らこたへて何なにをも彼かれにあたへしこと無なしといへり 4 ここにおいて王わう誰たれぞ庭󠄄にはにあるやと問とふ この時ときハマンは己おのがモルデカイのために設まうけたる木きにモルデカイを懸かけることを王わうに奏そうせんとして已すでに王わうの家いへの外そと庭󠄄にはに來きたりて居をる 5 王わうの臣僕しもべ等ら王わうにつげてハマン庭󠄄にはに立たちをると言いひければ王わうかれをして入いり來きたらしめよと言いふ 6 ハマンやがて入いりきたりしに王わうかれにいひけるは王わうの尊󠄅たふとばんと欲ほつする人ひとには如何いかになさば善よからんかとハマン心こゝろにおもひけるは王わうの尊󠄅たふとばんとずる者ものは我われにあらずして誰たれぞやと 7 ハマンすなはち王わうにいひけるは王わうの尊󠄅たふとばんと欲ほつする人ひとのためには 8 王わうの着きたまへる衣服󠄃ころもを携たづさへ來きたらしめかつ王わうの乘のりたまへる馬むま即すなはちその頭かしらに王わうの冠冕󠄅かんむりを戴いただける馬むまをひき來きたらしめ 9 これを王わうの最もつとも貴たふとき一人ひとりの牧伯つかさの手てにわたし王わうの尊󠄅たふとばんとする人ひとに其その衣服󠄃ころもを衣きせしめこれを馬むまにのせて邑まちの街衢ちまたをみちびき通󠄃とほり 王わうの尊󠄅たふとばんと欲ほつする人ひとには是かくのごとくなすべしと呼よばはらしむべし

10 王わうハマンに言いひけるは急󠄃いそぎなんぢが言いひしごとくその衣服󠄃ころもと馬むまとを取とり王わうの門もんに坐ざするユダヤ人びとモルデカイに斯かくなせよ なんぢが言いひしところを一ひとつも缺かくこと無なからしめよ〘702㌻〙 11 ここにおいてハマン衣服󠄃ころもと馬むまとを取とりモルデカイにその衣服󠄃ころもを着きせ彼かれをして邑まちの街衢ちまたを乘のりとほらしめその前󠄃まへに呼よばはりて云いふ王わうの尊󠄅たふとばんと欲ほつする人ひとには是かくのごとくなすべしと
 909㌻ 
12 かくてモルデカイは王わうの門もんにかへりたりしがハマンは愁うれへなやみ首かうべをおほふておのれの家いへにはしりゆき 13 しかしてハマンおのが遇󠄃あへる事ことをことごとくその妻つまゼレシとその朋友とも等らに吿つげるにその智者ちしや等たちおよびその妻つまゼレシかれに言いひけるは 彼かのモルデカイすなはちなんぢがその前󠄃まへに敗やぶれはじめたる者ものもしユダヤ人びとならば汝なんぢこれに勝󠄃かつことを得えじ必かならずその前󠄃まへにやぶれんと 14 かれら尙なほハマンとものいひをる間うちに王わうの侍從じじうきたりてハマンをうながしエステルが設まうけたる酒宴しゆえんにのぞましむ

第7章

1 王わうまたハマンとともに后きさきエステルと酒宴しゆえんせんとて來きたれり 2 この第だい二の酒宴しゆえんの日ひに王わうまたエステルに言いひけるは后きさきエステルよなんぢのもとめは何なになるや かならず許ゆるさるべし 汝なんぢのねがひは何なになるや國くにの半󠄃分󠄃なかばにいたるとも成󠄃就なしとげらるべし 3 后きさきエステルこたへて言いひけるは王わうよ我われもし王わうの御おん目めの前󠄃まへに恩めぐみを得え王わうもし善よしと見みたまはばわがもとめにしたがりこわが生命いのちをわれに賜たまへ またわが願ねがひにしたがひてわが民たみを我われに賜たまへ 4 我われとわが民たみは賣うられて滅ほろぼされ殺ころされ絕たやされんとす 我われらもし奴婢ぬひに賣うられたるならんには我われ默もくしてはべらん 敵人あたびとは王わうの損害󠄅そんがいを償つぐなふ事こと能あたはざるなり 5 アハシユエロス王わう后きさきエステルにこたへて言いひけるは之これをなさんと心こゝろにたくめる者ものは誰たれまた何處いづくにをるや 6 エステルいひけるはその敵てきその仇人あたびとは即すなはちこの惡あしきハマンなりと 是これによりてハマンは王わうと后きさきの前󠄃まへにありて懼おそれたり 7 王わう怒いかり酒宴しゆえんの席せきをたちて宮殿みやの園そのに往󠄃ゆきければハマンたちあがりて后きさきエステルに生命いのちを乞こへり 其そはかれ王わうのおのれに禍災わざはひをなさんと決きはめしを見みたればなり 8 王わう宮殿みやの園そのより歸かへりて酒宴しゆえんの場ばにいたりしにエステルのをる牀榻とこの上うへにハマン俯伏ひれふしゐたれば王わういひけるは彼かれはまた家いへの內うちにてわが前󠄃まへに后きさきを辱はづかしめんとするかと此このことば王わうの口くちより出いづるや人々ひと〴〵ハマンの面かほをおほへり 9 時ときに王わうの前󠄃まへにある一人ひとりの侍從じじうハルボナいひけるは王わうの爲ために善よき事ことを言いひたりしかのモルデカイを懸かけんとてハマンが作つくりたる五十キユビトの木きハマンの家いへに立たちをるなりと王わういひけるは彼かれをその上うへに懸かけよ
 910㌻ 
10 人々ひと〴〵ハマンを其そのモルデカイをかけんとて設まうけし木きの上うへに懸かけたり 王わうの震怒いかりつひに解とく〘703㌻〙

第8章

1 その日ひアハシユエロス王わうユダヤ人びとの敵てきハマンの家いへを后きさきエステルに賜たまふ モダカイもまた王わうの前󠄃まへに來きたれり 是こはエステル彼かれが己おのれと何いかなる係かかはりなるかを吿つげたればなり 2 王わうハマンより取とりかへせし己おのれの指ゆび環󠄃わをはづしてモルデカイに與あたふ 而しかしてエステル、モルデカイをしてハマンの家いへをつかさどらしむ

3 エステルふたゝび王わうの前󠄃まへに奏そうしてその足下あしもとにひれふしアガグ人びとハマンがユダヤ人びとを害󠄅がいせんと謀はかりしその謀計はかりごとを除のぞかんことを淚なみだながらに乞こひ求もとめたり 4 王わうエステルにむかひて金圭きんけいを伸のべければエステル起󠄃おきて王わうの前󠄃まへに立たち 5 言いひけるは王わうもし之これを善よしとしたまひ我われもし王わうの前󠄃まへに恩めぐみを得えこの事こともし王わうに正たゞしと見みえ我われもし御おん目めにかなひたらば アガグ人びとハンメダタの子こハマンが王わうの諸州しよしうにあるユダヤ人びとをほろぼさんと謀はかりて書かきおくりたる書ふみをとりけすべき旨むねを書かきくだしたまへ 6 われ豈あにわが民たみに臨のぞまんとする禍害󠄅わざはひを見みるに忍󠄄しのびんや 豈あにわが宗族やからのほろぶるを見みるにしのびんや 7 アハシユエロス王わう后きさきエステルとユダヤ人びとモルデカイにいひけるはハマン、ユダヤ人びとを殺ころさんとしたれば我われすでにハマンの家いへをエステルに與あたへまたハマンを木きにかけたり 8 なんぢらも亦またおのれの好このむごとく王わうの名なをもて書ふみをつくり王わうの指ゆび環󠄃わをもてこれに印いんしてユダヤ人びとにつたへよ王わうの名なをもて書かき王わうの指ゆび環󠄃わをもて印いんしたる書ふみは誰たれもとりけすこと能あたはざればなり

9 ここをもてその時ときまた王わうの書記しよき官くわんを召めしあつむ是これ三月󠄃ぐわつすなはちシワンの月󠄃つきの二十三日にちなりきしかして印度いんどよりエテオピアまでの百ひやく二十七州しうのユダヤ人びと州しう牧ぼく諸州しよしうの方伯はうはく牧伯等つかさたちにモルデカイが命めいぜんとするところを盡こと〴〵く書かきしるさしむ 即すなはちもろもろの州しうにおくるものはその文󠄃字もじをもちひ諸もろ〳〵の民たみにおくるものはその言語ことばをもちひて書かきおくりユダヤ人びとにおくるものはその文󠄃字もじと言語ことばをもちふ
 911㌻ 
10 かれアハシユエロス王わうの名なをもてこれをかき王わうの指ゆび環󠄃わをもてこれに印いんし驛卒はゆまづかひをして御み廐󠄇むまやにてそだてたる逸はや足あしの御ご用よう馬むまにのりてその書ふみをおくりつたへしむ 11 その中うちに云いふ王わうすべての邑まちにあるユダヤ人びとに許ゆるす彼かれらあひ集あつまり立たちておのれの生命いのちを保護ほごしおのれを襲󠄂おそふ諸國しよこく諸州しよしうの一切すべての兵へい民みんをその妻つま子こもろともにほろぼし殺ころし絕たやし且かつその所󠄃有󠄃物もちものを奪うばふべし 12 アハシユエロス王わうの諸州しよしうにおいて十二月󠄃ぐわつすなはちアダルの月󠄃つきの十三日にち一日にちの內うちかくのごとくするを許ゆるさる 13 この詔旨みことのりを諸州しよしうにつたへんがためまたユダヤ人びとをしてかの日ひのために準備そなへしてその敵てきに仇あだをかへさしめんがためにその書かける物ものの寫本うつしを一切すべての民たみに開ひらきて示しめせり〘704㌻〙 14 驛卒はゆまづかひ逸はや足あしの御ご用よう馬むまにのり王わうの命めいによりて急󠄃いそがせられせきたてられて出いでゆけりこの詔書みことのりはシユシヤンの城󠄃しろにおいて出いだされたり

15 かくてモルデカイは藍あゐと白しろの朝󠄃服󠄃てうふくを着き大おほいなる金きんの冠かんむりを戴いただき紫色むらさきの細布ほそぬのの外衣うはぎをまとひて王わうの前󠄃まへよりいできたれり シユシヤンの邑まち中ぢう聲こゑをあげて喜よろこびぬ 16 ユダヤ人びとには光輝ひかりあり喜悅よろこびあり快樂たのしみあり尊󠄅榮ほまれありき 17 いづれの州しうにても何いづれの邑まちにても凡すべて王わうの命令おふせと詔書みことのりのいたるところにてはユダヤ人びとよろこぴ樂たのしみ酒宴しゆえんをひらきて此この日ひを吉よき日ひとなせりしかして國くにの民たみおほくユダヤ人びととなれり是こはユダヤ人びとを畏おそるる心こゝろおこりたればなり

第9章

1 十二月󠄃ぐわつすなはちアダルの月󠄃つきの十三日にち王わうの命令おふせと詔書みことのりのおこなはるべき時ときいよいよ近󠄃ちかづける時ときすなはちユダヤ人びとの敵てきユダヤ人びとを打うち伏ふせんとまちかまへたりしに却かへつてユダヤ人びとおのれを惡にくむ者ものを打うちふする事こととなりける其その日ひに
 912㌻ 
2 ユダヤ人びとアハシユエロス王わうの各かく州しうにある己おのれの邑々まち〳〵に相あひあつまりおのれを害󠄅がいせんとする者ものどもを殺ころさんとせり誰たれも彼かれらに敵あたることを得うる者ものなかりき 其そは一切すべての民たみユダヤ人びとを畏おそれたればなり 3 諸州しよしうの牧伯つかさ州牧しうぼく方伯はうはくなど凡すべて王わうの事ことを辨とり理おこなふ者ものは皆みなユダヤ人びとをたすけたり 是これモルデカイを畏おそるるによりてたり 4 モルデカイは王わうの家いへにて大おほいなる者ものとなりその名な各かく州しうにきこえわたれり斯かくその人ひとモルデカイはますます大おほいになりゆきぬ 5 ユダヤ人びとすなはち刀刃󠄃やいばをもてその一切すべての敵てきを擊うちて殺ころし滅ほろぼしおのれを惡にくむ者ものを意こゝろのままに爲なしたり 6 ユダヤ人びとまたシユシヤンの城󠄃しろにおいても五百ひやく人にんを殺ころしほろぼせり 7 パルシヤンダタ、ダルポン、アスパタ 8 ポラタ、アダリヤ、アリダタ 9 パルマシタ、アリサイ、アリダイ、ワエザタ 10 これらの者ものすなはちハンメダタの子こユダヤ人びとの敵てきたるハマンの十人にんの子こをも彼かれら殺ころせりされどその所󠄃有󠄃物もちものには手てをかけざりき

11 シユシヤンの城󠄃しろの內うちにて殺ころされし者ものの數󠄄かずをその日ひ王わうにまうしあげければ 12 王わうきさきエステルにいひけるはユダヤ人びとシユシヤンの城󠄃しろの內うちにて五百ひやく人にんを殺ころしまたハマンの十人にんの子こをころせり王わうのその餘ほかの諸州しよしうにおいては幾何いくばくなりしぞや 汝なんぢまた何なにか求もとむるところあるやかならず許ゆるさるべし尙なほ何なにかねがふところあるや必かならず成󠄃就なしとげらるべし 13 エステルいひけるは王わうもし之これを善よしとしたまはば願ねがはくはシユシヤンにあるユダヤ人びとに允ゆるして明日あすも今日けふの詔旨みことのりのごとくなさしめ且かつハマンの十人にんの子こを木きに懸かけしめたまへ〘705㌻〙 14 王わうかく爲なせと命めいじシユシヤンにおいて詔旨みことのりを出いだせりマンの十人にんの子こは木きに懸かけらる 15 アダルの月󠄃つきの十四日かにシユシヤンのユダヤ人びとまた集あつまりシユシヤンの內うちにて三百びやく人にんをころせり然しかれどもその所󠄃有󠄃物もちものには手てをかけざりき 16 王わうの諸州しよしうにあるその餘ほかのユダヤ人びともまた相あひあつまり立たちておのれの生命いのちを保護ほごしその敵てきに勝󠄃かちて安やすんじおのれを惡にくむ者もの七萬まん五千せん人にんをころせり然しかれどもその所󠄃有󠄃もちものには手てをかけざりき
 913㌻ 

17 アダルの月󠄃つきの十三日にちにこの事ことをおこなひ十四日かにやすみてその日ひに酒宴しゆえんをなして喜よろこべり 18 されどシユシヤンにをるユダヤ人びとはその十三日にちと十四日かとにあひ集あつまり十五日にちにやすみてその日ひに酒宴しゆえんをなして喜よろこべり 19 これによりて村々むら〳〵のユダヤ人びとすなはち石垣いしがきなき邑々まち〳〵にすめる者ものはアダルの月󠄃つきの十四日かをもて喜樂よろこびの日ひ酒宴しゆえんの日ひ吉日よきひとなして互たがひに物ものをやりとりす

20 モルデカイこれらの事ことを書かきしるしてアハシユエロス王わうの諸州しよしうにをるユダヤ人びとに遠󠄄とほきにも近󠄃ちかきにも書ふみをおくり 21 アダルの月󠄃つきの十四日かと十五日にちを年々とし〴〵にいはふことを命めいじ 22 この兩ふたつの日ひにユダヤ人びとその敵てきに勝󠄃かちて休やすみこの月󠄃つきは彼かれのために憂愁うれへより喜樂よろこびにかはり悲哀かなしみより吉日よきひにかはりたれば是これらの日ひに酒宴しゆえんをなして喜よろこびたがひに物ものをやりとりし貧󠄃まづしき者ものに施與ほどこしをなすべしと諭󠄄さとしぬ 23 ここをもてユダヤ人びとはその已すでにはじめたるごとくモルデカイがかれらに書かきおくりしごとく行おこなひつづけたり 24 アガグ人びとハンメダタの子こハマンすなはちすべてのユダヤ人びとの敵てきたる者ものユダヤ人びとを滅ほろぼさんと謀はかりプルすなはち籤くじを投なげてこれを滅ほろぼし絕たやさんとしたりしが 25 その事こと王わうの前󠄃まへに明あきらかになりし時とき王わう書ふみをおくりて命めいじハマンがユダヤ人びとを害󠄅がいせんとはかりしその惡あしき謀計はかりごとをしてハマンのかうべに歸かへらしめ彼かれとその子等こらを木きに懸かけしめたり

26 このゆゑに此この兩ふたつの日ひをそのプルの名なにしたがひてプリムとなづけたり斯かゝりしかばこの書ふみのすべての詞ことばによりこの事ことにつきて見みたるところ己おのれの遇󠄃あひたるところに依よりて 27 ユダヤ人びとあひ定さだめ年々とし〴〵その書かけるところにしたがひその定さだめたる時ときにしたがひてこの兩ふたつの日ひをまもり己おのれとおのれの子孫しそんおよび凡すべて已すでにつらなる者ものこれを行おこなひつづけて廢はいすること無なく
 914㌻ 
28 この兩ふたつの日ひをもて代々よゝ家々いへ〳〵州々くに〴〵邑々まち〳〵において必かならず記念おぼえてまもるべき者ものとなしこれらのプリムの日ひをしてユダヤ人びとの中うちに廢はいせらるること無なからしめまたこの記念きねんをしてその子孫しそんの中なかに絕たゆること無なからしむ〘706㌻〙

29 かくてアビハイルの女むすめなる后きさきエステルとユダヤ人びとモルデカイおほいなる力ちからをもて此このプリムの第だい二の書ふみを書かきおくりてこれを堅かたうす 30 すなはちモルデカイ、アハシユエロスの國くにの百ひやく二十七州しうにある一切すべてのユダヤ人びととに平󠄃和へいわと眞󠄃實しんじつの言語ことばをもて書ふみをおくり 31 斷食󠄃だんじきと悲哀かなしみのことにつきてプリムのこれらの日ひを堅かたうしてその定さだめたる時ときを守まもらしむすなはちユダヤ人びとモルデカイと后きさきエステルが曾かつてかれらに命めいじたるごとくまたユダヤ人びと等らが曾かつてみづから己おのれのためおよびおのれの子孫しそんのために定さだめたるがごとし 32 エステルの語ことばプリムにかかはる是等これらの事ことをかたうせり是これは書ふみにしるされたり

第10章

1 アハシユエロス王わう國土くにおよび海うみの島々しま〴〵に貢みつぎをたてまつらしむ 2 アハシユエロス王わうが權勢いきほひと能力ちからをもて爲なしたる一切すべての事業わざおよび彼かれがモルデカイを高たかくして大おほいいなる者ものとならしめたる事ことの委くわしき話はなしはメデアとペルシヤの列王れつわうの日誌につしの書ふみに記しるさるるにあらずや 3 ユダヤ人びとモルデカイはアハシユエロス王わうに次󠄄つぐ者ものとなりユダヤ人びとの中なかにありて大おほいなる者ものにしてその衆多おほくの兄弟きやうだいによろこばれたり彼かれはその民たみの福祉さいはひをもとめその一切すべての宗族やからに平󠄃和へいわの言ことばをのべたりき〘707㌻〙
 915㌻